(1)排水管が詰まる3つの主な原因

営業中のピーク時に排水管が詰まり、厨房が水浸しになってしまうトラブルは、営業停止にも直結するため絶対に避けるべきです。

飲食店の配管は、一般家庭とは比較にならない量の汚れが毎日流れ込むため、詰まりの進行スピードが非常に早いです。主な原因と、スタッフ全員で徹底すべき対策を解説します。

清掃用のクリストラップ内部を示す画像。槽内には汚れた水があり、底部には排水口が見える。
グリストラップ清掃前

冷えて固まった油(油脂分・ラード) 配管詰まりの原因の約8割が「油」です。洗い物をしている時はお湯に溶けて液体として流れていきますが、配管の奥へ進んで冷えると、ラードのように白くカチカチに固まります。これが配管の内側に何層にもこびりつき、血管が詰まるように水の通り道を塞いでしまいます。

食材のカスや残飯の蓄積 お米、麺類、野菜の切れ端などが配管に流れ込むと、付着した油の層に引っかかります。特にお米や麺などの炭水化物は、水分を吸って膨張するため、強固な詰まりの原因になります。

異物の落下(爪楊枝、ラップ、スプーンなど) 洗い物中に誤って落とした小さなスプーンや、つまようじ、輪ゴム、ラップの切れ端などが配管のカーブ(トラップ部分)に引っかかると、それが「ダム」の役割を果たしてしまい、一気にゴミと油を堰き止めてしまいます。

(2)日常でできる詰まり予防対策

厨房の溝に水が溜まったグリストラップの内部を示す画像。
グリストラップ清掃

配管詰まりを防ぐ最大のポイントは、「油と固形物をシンクに流さないこと」に尽きます。以下のルールを店舗のオペレーションに組み込む必要があります。

すでにシンクの水を流した時に「ゴボゴボ」と異音がしたり、流れが遅くなったりしている場合は、配管の中で油が石のように固まりかけている危険なサインです。市販のパイプクリーナーでは溶かしきれない可能性が高い状態です。

対策アクション具体的な方法と効果
油の拭き取り(最重要)お皿やフライパンに残った油やソースは、いきなりお湯で洗わず、必ずゴムベラ(スクレーパー)やキッチンペーパーで拭き取ってからシンクに入れます。これだけで配管への油の流入を劇的に減らせます。
ストレーナー(ゴミ受け)の徹底シンクの排水口には必ず目の細かい「水切りネット」を被せます。米粒一つ、麺一本たりとも配管に流さないという意識をスタッフ全体で共有します。
営業終了後の「お湯流し」閉店作業の最後に、シンクから「50度前後のお湯」をたっぷり流し込みます。その日のうちに付着した柔らかい油を、固まる前に下水まで押し流すことができます。
グリストラップの清掃グリストラップがゴミや油で溢れてしまうと、その先の配管にダイレクトに汚れが流れ込みます。日々のバスケットのゴミ捨てと、浮いた油のすくい取りを欠かさず行います。

(3)排水管が詰まってしまった場合(専門業者にご依頼)

金属製のパネルと網目トレーが並んでいる作業場の内部。
グリストラップ仕切り板・バスケット

グリストラップを綺麗に保つ唯一のコツは、「汚れが固まる前(腐敗が進む前)に取り除くこと」です。以下の頻度で清掃をルーティン化してください。

頻度作業内容具体的な手順とポイント
毎日バスケットのゴミ捨て営業終了後、カゴに溜まった調理くずを必ず捨てます。翌日まで持ち越さないことが悪臭を防ぐ第一歩です。
毎日〜数日に1回浮上油の回収第2槽に浮いている油の塊を、専用の「すくい網」や「ひしゃく」で丁寧に取り除きます。
週に1〜2回バスケットの洗浄ゴミ取りカゴ自体をブラシと中性洗剤で洗い、網目の目詰まりを防ぎます。
月に1回底のヘドロ引き上げ底に沈殿したドロドロの汚泥を、柄の長い金網などですくい上げて廃棄します。

(3)排水管が詰まってしまった場合(専門業者にご依頼)

排水溝を掃除している男性の作業風景
グリストラップ内の清掃作業

排水管清掃と詰まり除去の手順(5ステップ)

業者が現場で行う基本的な作業ステップは以下の通りです。詰まりの重症度によってアプローチを変えていきます。

状況調査と原因の特定 いきなり作業を始めるのではなく、まずはシンク下の配管(トラップ)を外し、どこで水が止まっているかを確認します。目視できない奥の詰まりの場合は、管内カメラを入れて「何が・どこで」詰まっているのかを正確に特定します。

トーラーによる「貫通作業」(完全閉塞の場合) 配管が完全に油の塊で塞がって水が全く流れない状態の場合、いきなり高圧洗浄をかけると水が逆流して厨房が水浸しになってしまいます。そのため、まずは電動トーラー(ワイヤー)を挿入し、カチカチの油の層をドリルで砕いて「水が抜ける小さな通り道」を強制的に作ります。

高圧洗浄機による徹底的な「削り落とし」 水の通り道ができたら、メインとなる高圧洗浄を行います。特殊な洗管ホースを配管の奥へ進ませながら、内壁に何層にもこびりついた分厚いラード(油)やヘドロを、強力な水圧で根こそぎ削り落とします。削られた汚れは下水管へと一気に押し流されます。

強力な業務用ケミカルによる仕上げ 高圧洗浄で物理的な汚れを落とした後、微細な油膜や悪臭の原因となる雑菌を取り除くため、市販品の何倍も強力な業務用パイプクリーナー(水酸化ナトリウムなどを高濃度で含むもの)を投入することがあります。化学の力で残りの汚れを完全に溶かし切ります。

通水テストと最終確認 最後に、シンクから大量の水を一気に流し込みます。ゴボゴボという異音が消え、渦を巻いてスムーズに水が引いていくかを確認します。必要に応じて再度管内カメラを入れ、配管の内壁が綺麗に露出しているかをチェックして作業完了となります。

このように、プロの技術は「物理的な破壊力(トーラー)」「水圧による削ぎ落とし(高圧洗浄)」「化学の力(業務用洗剤)」を症状に合わせて的確に組み合わせることで、どんなに強固な詰まりも確実に除去しています。